2011/09
快適なライフスタイル

八ヶ岳ではもう紅葉が始まりました。真っ先に散り始めるのは白樺です。次にはカラ松に巻き付いたツタが真っ赤に色づきます。秋の日差しを浴びて輝く森の木々の紅葉は息を飲む美しさです。

いよいよここでは冬支度が始まる季節、一冬分の薪を買い込みます。薪は全部ナラです。ナラは温度が高く火持ちがいいのでここでは欠かせません。ストーブに火が入るのは11月、もう少し先になります。

 

たまにいろいろな方にこんな山の中で一人で毎日どうやって過ごしているのかと尋ねられますが、実はほとんど毎日机に向かっているというのが私の標準的な生活です。
6時前に起床、朝の身支度を整え、それからヨガと瞑想。8時には机に向かいます。

今年の春には10年がかりで長編を書き上げ、その後はまた次の作品の資料の読み込みをはじめています。

もっとも大変なのは書き始めるまでの資料の読み込みと構成です。資料はほとんどが古文書。意味を掴むまで三回も四回も同じところを繰り返し読むことになります。今は難解な仏教書と取り組んでいます。

しかし、構成が概ねできていざ書き始めると、それこそさらなる苦しみが待っています。頭と体と精神のすべてを使いながら、蚕のように物語の糸を紡ぎ出す、それはまるで素手で絶壁を登っているような苦闘の連続で、自らの能力に絶望してしまうこともしばしばです。

 

十種類以上の仕事を体験した作家の方に「どの仕事がいちばん大変でしたか?」と尋ねたら、「やはり書くことです」とお答えになりました。たしかに心身ともにボロボロになり、ときに脳の神経がねじ切れてしまうような感覚になります。

しかし、それが自分の魂からの仕事であれば、書き上がる頃、ようやく至福がやってきます。十年の苦しみに耐えさせた何かがその至福感を与えてくれるのでしょう。最後の章ともなると、日常的には経験することのない深い至福感の中で書くことになります。

 

先日もある方に「今、何を書いているのですか?」と尋ねられましたが、「いや~、たいしたものは・・・」と私は言葉を濁しました。

その理由はいったいこの作品がちゃんと書き上げられるのかどうか自分でも分からないからです。死ぬまでに書き上がるかどうか、と思っています。それくらい長いレンジで書かざるを得ないものにチャレンジをはじめています。

それにまたネオ心理学のガイドブック的な本も書いています。これは今年中には書き上がる予定です。小説よりはずっと楽ですが、それでも毎日、じっと考えつづけ、練り続けて、一日に書けるのはわずか。

 

そんな毎日を過ごす私にはやはり一人暮らしは必須条件であり、快適なライフスタイルでもあります。何もしていないときでも頭の中ではずっと書くことに意識を巡らせている、つまり仕事中だからです。

 

苦労はあるけれど楽しみながら書いているものがもうひとつあります。それはアメリカ向けの密教気学九星術の本で『気・アストロロジー』(astrology)といいます。

密教気学九星術を占いだと決めつける日本より、偏見のないアメリカで本を出したらどうかというアドバイスがアメリカの方からあったからです。そんなわけで今は三冊を同時進行しています。

 

それからアロリカのHPに最近、千図をもじって千の図書館という項目を新たに設けました。私がこれまでさまざまに影響を受け、心を育ててくれた本の紹介をしていますので、お時間のあるときにぜひ一度覗いてみてください。

2011/09/05 高瀬千図拝

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