ここ八ヶ岳では春は徐々に訪れるというより、あっという間にやってきます。木々の芽吹きのエネルギーのすごさにはいつも驚かされるのですが、今年は寒さが長引いたせいかその勢いはこれまでにないものでした。
毎朝、森はまさに目に見える速度で変化していき、冬枯れていた庭がしたたるような緑に変わるのにたった一週間しかかからなかったのです。いつもなら朱色の
そんな自然の営みを見ていて思いました。花も人も同じだと。長い間の風雪に耐え抜き、心をまっすぐにして生きたとき人もまた大輪の花を咲かせます。
数日前、そんなことを親友と話していて、そこで人をもっとも確実に成功に導く要素=鍵とはなんだろうという話になりました。
私たちの意見は『正直であること、素直であること』で一致しました。
嘘のない誠実な人間関係が人生の豊さを運んでくるからです。社会的にどんな立場や地位にあろうと『正直であること、素直であること』が何より大切であることに変わりはありません。
それがその人の『徳』でもあるからです。
問題はこれが後々努力して身につくものかどうか、というところにあります。『素直という徳』が身につくためには真の自覚が必要ですし、何が真実かということを知っていなくてはなりません。
たとえば、日々の出来事や人との関係の中で思うようにならない現実を目の前にしたとき、私たちは今の自分の現実が変わってくれれば、この人が変わってくれればと思います。しかし、現実を変えよう、変わってほしいと思うのは単なる私たちのエゴでしかありません。
相手や現実を変えようとしていかに力を発揮しようと、結果的に成功した例は歴史的に見ても実は皆無です。
二十世紀までの暴力革命や今も続いているシリアなどの権力者の暴虐を見ていても現実を自分の思い通りにしようとすることがいかに愚かしいかがわかります。
自分がやったことは自分に返ってくるというカルマの法則を彼らはきっと知らないのでしょう。
『自分の現実はすべて自分自身の意識の投影である』以上、人生の障害や困難は自分のエゴが映し出されたものにすぎません。
私たち自身の意識が変われば現実も変わるということでもあります。自らのエゴに気付いてエゴを手放していく、人生とは、生きる意味とはそのことに尽きる気がします。
空海を祖とする密教では『身=行動・口=言葉・意=心に思うこと』を一致させなさいと言います。『
これは道徳というより、そうすることで人はもっともパワフルに生きられるということを空海は私たちに教えてくれているのではないかと思います。
姑息な計算や駆け引きのない心は現実にも投影され、いわゆる波動の法則によってすばらしい人たちとの出会いを引き寄せます。その上、エゴを手放すたびに少しずつ自由で豊かな私たち本来の姿が現れてきます。
本来の姿とは何ものからも自由で、豊かで、創造的であるということです。
それこそが『正直と素直』がもたらしてくれる大いなる宝、成功の鍵ではないかと思います。
2012/06/06 高瀬千図拝