写真は上高地。先月、カッパ橋の上から撮ったものです。
上高地はここからさほど遠くはないのですが、なかなか行く機会がないままに過ごしていましたが、娘の友だちが遊びに来てくれたのを機会にお弁当をこしらえて出かけました。
深い山間のあちこちから豊かな水が湧きだし、清らかな流れを作っています。梓川です。いくら見ていても飽きない美しい景色でした。
ところで先日、BBC放送のドキュメンタリー番組で『アメリカの狼』の記録を見ました。
この夏、この辺りでも熊が出て騒ぎになったことは先月もお知らせしました。しかし、意外に知られていないのが狼とツキノワグマの生態です。
ツキノワグマはベジタリアンですし、狼は人を襲いません。彼らが襲うのは家畜です。誇り高い彼らは人間に飼われている犬をひどく嫌うともいわれています。
ツキノワグマに関しては人を襲ったニュースが大げさに喧伝されているので、肉食獣のように誤解されていますが、彼らが人に危害を加えるのは人が恐いからです。子熊を連れている母熊はとくに警戒心が強くなります。
里に下りてきて畑を荒らした熊をさんざん痛めつけて、二度と降りてこないようにしている、という人たちもいますが、たぶん逆効果です。
熊は非常に利口で知的な動物です。そんなひどいことをする人間をどう思うかほんとうに心配になります。熊と狼、どちらも人間が彼らのフィールドに近づきすぎたことで悲劇が起きています。
しかし、あるアメリカの女性は
冬、雪で車も入れない真夜中の森を何キロも一人で歩いて帰ったところ、狼たちは私を守るかのようにずっとそばを歩いていました。でも襲われるという恐怖は全くありませんでした。
と証言しています。
翌朝、家の玄関先まで三頭の狼の足跡が残っていたそうです。これが『送り狼』の語源かもしれません。しかも、このような体験は数多く報告されているのです。
人が狼を憎むようになったのは、彼らが家畜を襲うからです。食べる物も牛や鹿、野鳥や鶏、それに川を遡上してくるサケなど、人間と同じです。利害が一致しないのです。
それにしてもそのドキュメンタリー番組で見た野生の狼はほんとうに凛々しく魅力的でした。アメリカとかカナダには心底狼が好きな人たちがいます。いずれも生物学者でその生態に詳しい人たちです。
知性と誇りを備えた生き物。
雄は群れを率いて狩りをし、雌たちは子供たちを森の奥深く、ランデブーサイトと呼ばれる小川のほとりの日当たりのいい草地で遊ばせながら育てます。自然界の頂点にいるところも人間と同じです。
残念なことに日本狼は狂犬病によって絶滅したと言われています。狼のいない国・日本では生態系が壊れ、アルプスの希少な高山植物が鹿の食害で絶滅しかかり、果樹園も甚大な被害に泣かされています。
いまだ本物の狼に会ったことはないけれど、どういうわけかこの私も大の狼好き。子供の頃、シートン動物記の『狼王ロボ』を読んで以来です。野生の狼にいつか会いに行きたいと今も本気で思っています。
2012/10/06 高瀬千図拝
紙書籍版:Amazon