八ヶ岳は小梨の花も終わり、いよいよカラマツの緑が一年でいちばん美しい季節を迎えています。
いつもここは夏でも涼しいのですが、今年は例年よりはずっと肌寒く感じます。ヨーロッパは6月がいちばん暑いはずが、ドイツの友人によればこのところ、ストーブが必要なくらい肌寒いのだそうです。
天候異変は世界各地に及んでいますが、この広大な宇宙。そのほんのひとすみにある小さな惑星群である太陽系。そこに少々の変化があったとしても何の不思議もありません。
先日、友人夫妻が遊びに来てくれ、久しぶりに『Ants アリ』というアニメを見ました。
ウッディ・アレンが主人公の働きアリの声優をつとめ、相手の王女の声はシャーロン・ストーン、友達の兵隊アリの声はシルベスタ・スタローンという豪華な組み合わせです。
しかし、主人公の働きアリは、毎日が穴掘りと土運び。そんな単純労働に明け暮れる毎日が退屈すぎてすっかり鬱になり、ついに外の世界に出ようとします。
彼らアリが夢見るのは、いつか話に聞いた『インセクトピア』。インセクトは虫、それにひっかけてユートピアをもじったものです。そこは夢のようにすばらしい世界だというのです。その世界の目印はモノリス、石柱が立っていると。
物語は展開し、アリの世界でも勢力争いに覇権主義者の横暴などが続き、ついに主人公は王女とともにそのコミュニティを逃げだして旅に出ます。
そして苦難の旅(?)のはてにようやくインセクトピアにたどり着きます。甘いジュースの池、一生かかっても食べきれないほどの山積みのさまざまなお菓子。確かにそこはアリにとってはユートピアでした。
しかし、カメラがどんどん引いてその場所を空から見ていくと、ニューヨークのセントラル・パークのゴミ捨て場。モノリスはそこの水飲み場。ファンタの空き瓶にドーナツの食べ残し、チョコレートetc・・・。
「人間も似たようなものだな。小さな世界で大騒ぎしているんだからな」と友人はつぶやきました。同感です。
私は現実のことに少々疲れてくると、この『Ants』というアニメを見ます。
そこにいるのは私たちとちっとも変らない日々を生きているアリたちの世界。ほんとに小さな世界で深刻になったり、争ったり、大騒ぎをしているのです。このアニメは風刺が効いていて笑えます。いちいち深刻になったところでたかが知れていると思えてきます。
それしかないと思い込み、何かにしがみつくとき、これだけは失いたくないと必死に守ろうとし始めたとき、必ずと言っていいほど人の心の内側に貼りついているのは『失う恐れ』です。
失うことの恐れはこの日々の暮らしの中にたくさん隠れていて、私たちの世界を狭く小さいものにしています。
それを見つける方法はただひとつ、失いたくないと思うもの、失ったら大変だと思う物を探し出してみること、そしてそれが見つかったら、心に『失ったら恐い』がはりついているかどうか調べます。
『恐い』を感じることができたら、なにか物質的なものをイメージして捨ててしまってください。
後は深呼吸。それだけで心も体もエネルギーの通りがよくなってきます。試してみてください。
2013/07/06 高瀬千図拝
Amazonビデオ
DVD版:楽天