2015/09
成長するのに必要な時間

残暑を覚悟していたらいつの間にか夏が終わってしまっていました。

気候変動が話題になるようになって久しいのですが、インドの作家アルダンディ・ロイは『小さきものたちの神』という著作のなかで、この地球の歴史をひとりの『地球女の全生涯』に置き換えるとどうなるか、という話をしています。

この星に最初の単細胞が現れたとき、この地球女はまだ11才、恐竜が歩き回ったのはたった8カ月前!、その時の地球女の年齢は45才、

『で、それで言えば、われわれ人類の歴史が始まったのは、地球女の時間ではたった2時間前にすぎないんだよ』

というくだりがあり、笑ってしまいました。インドらしい捉え方です。
 

そのたった二時間の間、私たちの世界は絶え間なく戦争を続けてきました。

他民族を支配し、富を略奪し、隣人たちを虐殺する、今もそれは続いています。シリアだけでなくたくさんの国から難民が生まれています。イスラム国というまるで中世に逆戻りしたかのような野蛮な人々。女性を奴隷化し、日々その売買に熱狂する男たち。

「正直言ってうらやましいよ。俺も一度はやってみたいよ」

と言った最高学府を出た男性がいました。
 

命を賭して取材をしていた方がいてくれて、私たちは中東で何が起きているかいくらかは知ることができています。

危険な国でいちばん必要なものは教育だと、教師のボランティアをしていた女性が人質になったとき、それを「自己責任」だと言ってのけた日本の首相がいました。

ヨーロッパに流れ込むシリアからの難民の群れをドイツは年間50万人受け入れると表明しました。ナチスが行ったことの償いのひとつだとメルケル首相は語っています。
 

一方でこの国日本は難民どころか外国からは孤児となった子供を養子に迎えることすらできません。

長崎県の難民収容所にいた男性からは

「人間扱いされなかった。悲惨で過酷だった」

と聞きました。
受動的平和が続いたこの国では、平和ボケも当たり前のことなのかもしれませんが、もし本気で憲法第九条を遵守する、というならそれ相応の覚悟が必要です。

できることは積極的な外交政策だけ。難民も養子も受け入れないというのでは、幼稚なエゴイスト国と批難されても仕方がありません。
 

軍備も必要です。

チベットがひとつの例です。軍備もなく祈りと平和のうちに生きていた人々はある日、隣国に侵略され、虐殺され、資源はすべて略奪され、国すらも消えてしまいました。

軍備反対というなら、その人たちにチベットに起きたことを受け入れる覚悟があるのかどうか。
 

ほんとうの問題は私たちの意識です。スイスが国民皆兵制を維持していられるのは国民の意識が高いからですが、この国にはまだそれだけの知性が育っていません。

テレビでは連日、意味のないバカ騒ぎ番組のオンパレード、コマーシャルの洪水が続いています。まさに愚民化政策もいいところです。

軍部の暴走を止められなかった第二次大戦からこの国はいまださほど成長していないのではないか、という懸念が抜けません。

地球女の時間で言えば、それも瞬きの一瞬のこと。成長するにはまだもう少し時間が必要なのかもしれません。地球女にとってのせめて二十分だけでも。

2015/9/8 高瀬千図拝

 

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小さきものたちの神

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