最近、年齢のせいか早寝早起きになってしまいました。あんなに宵っ張りだったのに。
お陰でこんな美しい日の出を見る機会も増えました。太陽が顔をのぞかせたとたんに深呼吸します。それから柏手を打って手を合わせます。なぜかそうしてしまいます。やはりつくづく日本人だなあと思います。
70才になったのをきっかけに体力測定を受けてみたら、左足が右足より筋肉が弱いことが分かり、では筋肉強化にはどうしたらいいのか尋ねたら、水泳がいちばんいいとのこと。クロールを習ったのは確か三十年前。
でもこれも自転車と一緒で体が覚えていました。まずは水中を30分間、歩くことにしました。水の抵抗が刺激になってこれもかなり良い運動になります。それから軽く泳いで帰ってきます。
最近よく言われるのが『脳』は筋肉が支えているという話。つまり血流がいいと『脳』へも充分に酸素が行き渡る仕組みです。筋肉がそれを支えています。そこへちょうど本棚にあった『子供の脳は肌にある』山口創著(光文社文庫)を改めて読みなおしました。
親からニグレクト(ネグレクト)されて育った子は発育が明らかに悪いこと、知能も低くなることが知られています。親に抱っこされ、撫でてもらい、そうしたスキンシップを受けた子は心身共に安定して発達することが知られています。生まれたばかりの赤ん坊も肌に触れられることで愛されていることを知るのです。
私が子育てを始めたころは『スポック博士の育児書』というのが大流行で、核家族が始まった世代でもあり、子育ての心細さから若い母親はこの本に飛びつきました。
実はこれが一生の悔いを残すことになります。
『子供をむやみに抱いてはいけない』『赤ん坊はどんなに泣いてもひとりで寝かせなさい』そうしないと独立心が育たないとか、もろもろ書いてあり、泣いているまだ生まれて間もない我が子を抱いてあげることも、部屋に入ることも我慢しました。
それが子供のためなんだと信じて。子供部屋のドアの前に座って子供が泣き疲れて眠るまで、私も泣いていました。
子供を産んだこともない男に何が分かる!
と本気で腹が立ったのは子供たちが大きくなってからのことです。つまり泣いても抱いてもらえなかった子供は不安感が強く、自信のない子に育つことがその後の追跡調査で明らかになったのです。
日本式に母と子が一緒に寝る、いつも母の匂いのするところにいる、おんぶやだっこが子供の情緒の発達にいかに大切かが証明された時の悔しさ。これは私だけの話ではなく、同世代の母親の何人かで「あいつを訴えてやりたい」という話にまでなりました。
アイツとはスポック博士です。
戦後の日本人の自信のなさもひとつの原因でした。アメリカはすごい、アメリカの言うことは正しい、そんな時代と共に育ったからです。
とはいうものの、子育ては元に戻すことができません。以来、とにかく自分の感じたとおりに行動することにしました。何があっても私はあなたの味方と言い続け、互いに人としての厚い信頼関係を築くこと。
それだけが後悔してもしきれない私の子育ての穴を埋める唯一の方法でした。
若い皆さんは我が子をどうぞしっかり抱きしめてあげてください。スキンシップこそが親子の信頼のもとだから。
2016/02/06 高瀬千図拝