2016/04
大きな財産

環水公園 スタバ

写真は富山の環水公園。映っている建物は今や世界一美しいと言われているスターバックスです。

今は桜が満開。市内を流れる松川べりは桜並木に彩られています。その松川ですが、途中からイタチ川と名を変えます。

以前、宮本輝氏の小説の舞台となった『蛍川』はこのイタチ川のことです。名前の由来はわかりませんが、 常願寺川じょうがんじがわ という立山から流れ出す大きな川の支流にあたります。美しい小さな川で富山市中を横切って流れ、市民に大切にされ愛されています。
 

思い立って先日、その『蛍川』を読み直したのですが、富山が雪深く、来る日も来る日も灰色の空に覆われ、陰鬱な空気に押しつぶされそうな土地だという印象はこの作品が原因だったのかもしれないと思いました。

実際に住んでみると、海は近いし、人は人懐っこいし、川は美しいし、雪もさほど降りません。降っても道路には融雪装置が整備されているので、まるで小さな噴水のように水が噴き出しては雪を溶かしてしまいます。

しかも何といっても富山市を見下ろす立山連峰の雄姿、そびえたつ 雄山おやま と 剣岳つるぎだけ の美しさは見事というしかありません。
 

それにまた長崎の漁村で育った私にとって富山湾の魚には懐かしいものがたくさんありました。サヨリ、小さなイワシ、キス、朝上がったばかりの小さな魚が手に入るのは海辺で育った者にはひたすら嬉しいものでした。

ずっと富山に住んでいたい、と思ったのですが、ここと八ヶ岳の我が家と両方を管理するのがいささか重荷になってきました。たまには富山に帰ってきたいと言っていた娘を待って少々広めのマンションに住んだのですが、病院勤めの激務で一日も帰れませんでした。今年はもっと過酷な毎日が待っていると聞きました。つまり待っていても彼女は帰ってくる時間がないのです。
 

今年21才になる猫のプージャ(人間なら百才をとっくに越してます)にも大好きな森でもう一度過ごさせてやりたいとも思いました。たぶん彼女の余命も3、4年でしょうから。

そんなわけで、富山にはたまに遊びに来ることにして、八ヶ岳の我が家に戻ることにしました。冬は確かに厳しいのですが、ほかのどこにもない美しい朝があって、雪が降った後の朝日に輝く森はただただ神々しいばかりです。
 

それにしても娘のおかげで富山という土地を知ったことは私には大きな財産になりました。友達もたくさんできました。八ヶ岳に戻ると言ったとたん泣き出した友人はたぶんこれからもずっと一生付き合っていく親友になると思います。

こんなによそ者に親切で、暖かい土地はめったにあるものではありません。自然環境にも恵まれ、食と人情の豊かな土地。後ろ髪をひかれる思いです。ただ意外に八ヶ岳からは近いので、これからも度々遊びに来るつもりです。逆に今度は富山からの新たなお客様がやってきそうな気配です。今夢中になっている植物細密画も山では描く対象に事欠きません。
 

夏には上高地を越えれば大好きな海に出ることができますし、中野市に住む友人とは富山で待ち合わせて、またグルメ三昧の日々を過ごしたい。やはり3年の富山暮らしでしたが、何か私の芯に長い間、眠っていたものを目覚めさせてくれた気がしています。陽気で闊達で人が大好き、という。

2016/04/06 高瀬千図拝

 

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蛍川 (角川文庫)

 

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