2018/01/16
独占欲の強いリス

我が家の庭には一年中、ニホンリスがやってきます。

独占欲が強くて他のリスが来てもしつこく追い回して追い出してしまいます。さほど広くもないし、かといって狭くもない私の小さな森は彼の独壇場。相手が誰でも「キッキッ」とか「チチ、チチ」といった声で威嚇します。

かつて猫のプージャがベランダで日向ぼっこしていたときも、真ん前に来て「キッキッ」としきりに威嚇していました。リスはリスなりに「この猫は害がない」と判断した結果でしょう。それをプージャは「何を言ってるかわかんない」という顔で見ていました。
 

同じ子かどうかはわかりませんが、今も毎日リスがやってきます。

体はだいたい20センチ、尻尾をいれると35センチくらいにはなるかもしれません。薄い茶色。光があたると尻尾が輝いて見えます。小さい割に貪欲で、蜜柑を四ツ割りにして上げるとすべて持っていってどこかに隠します。

いつかどこに隠すのかと見ていたら、ベランダの前の樅の木の枝の中に隠しました。四個とも。
それで安心したのか、今度は小鳥たちのために置いてあるヒマワリの種を休みなくかじり始めました。

いつだったかは、ヒマワリの種をひとつかじってはひとつ抱えて餌台から降りて、右手で地面に穴を掘り、一個隠すとまた餌台にのぼってきて一個かじり、一個抱えて降りて地面に穴を掘って隠す、というのを飽きず繰り返していました。

見ていると、走ってきた勢いで70センチほどの高さのある餌台に器用にピョンピョンと勢いをつけて上るのですが、ある日、失敗してしまいました。両手で餌台の縁にぶら下がり、少々メタボの白いお腹をダラーンと見せて、しばし何が起きたのかわからないという顔で呆然としているのがおかしくて私はひとり大笑いしてしまいました。
 

リスの記憶力がどの程度かはわかりません。たいていは明日になればどこに何を隠したのか忘れてしまうようです。蜜柑を隠した翌日、私の思った通り、蜜柑を食べに来たのはリスではなく小鳥たちでした。

樅の木の枝の間につぎつぎにシジュウカラやカワラヒワ、ヤマガラが出入りして蜜柑をつついていました。たぶん、リスは自分がそこに蜜柑を隠したことをもう忘れていて、通りがかりにまた偶然見つけるだけではないかと思います。

いつだったか、高く伸びた山桜の木の枝に蜜柑がなっていてびっくりしたことがあります。リスの仕業だとすぐにわかったのですが、あまりにシュールな光景に一人笑いだしてしまいました。
 

数年前の春、そのリスが同じくらいの大きさの別の動物とずっと威嚇しあっているのに気づきました。

私が近づいても両者は互いに威嚇するのに夢中で私に気づきません。相手を睨んでキッキッと威嚇しながらにらみ合いが続きました。リスが威嚇している相手はこれまで見たこともない青いネズミでした。大きさはリスと同じ、鼻はきれいなピンク。体は藍色。

「はあ、この森には青いネズミがいるんだ」

と思っただけで、飽きず威嚇しあっている二匹から離れました。友だちに話すと「そんなネズミ、いるはずがない。新種かもしれない」とのこと、私が写真を取らなかったことを嘆きました。

今度また青いネズミを見かけたら絶対に写真を撮るつもりです。銀色のモグラも。

ここにはまだ人に知られていない何か不思議なものが生き続けている気がします。住んでいるからこそ、それに毎日数時間、ぼーっと庭を眺めているからこそ出会える出来事なのかもしれません。

頭の悪いキジのこと、かわいくて利口なキツネの親子のこと、フクロウの巣立ちの様子、アオゲラが結構いたずら好きだということ、これからもこの森の動物たちのことをお知らせしたいと思います。
 

2018/01/16 高瀬千図

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA