2018/05/09
森が歌い出す季節

貯水池

ここもようやく春です。浚渫工事しゅんせつこうじと護岸工事が終わった家の近くの貯水池は今、みどりの豊かな水をたたえています。マガモやカイツブリ、スズガモなどがゆったりと泳いでいて、お天気のいい日は土手に座ってそんな水鳥を眺めています。

ここの春は一月ひとつき遅くきて、温度が低いので長く留まってくれます。寒い季節が長いので、春が来ると私もいささか興奮状態になります。
 

今年は変な寒さで、雪よりは氷の冬でした。厳しかった寒さのせいか山桜がいつもの年よりずっとたくさん咲きました。とても見事で美しかったのですが、それも散り始めました。

それでも、いつも、「ああ、また森が歌い出す季節がきた」と思います。

ほんとうに森は歌い出します。ツグミも渡ってきて、見事な歌を披露します。イカルというくちばしが黄色で羽がグレーと黒というちょっと地味な鳥がいますが、遊びに来ていた子に「あれがイカルの声だよ」と教えてもらいました。森中に響く、驚くほど美しい声をしています。

繁殖の季節なので、早朝からキジの雄は大変です。ケーン、ケーンという甲高い声で鳴きながら歩き回っています。姿は尾のないクジャクみたいに美しいのですが、その声はちょっとひどいもので、それが朝5時から庭をうろうろ。寝ていた私にはいささか迷惑なのですが、彼は命がけで雌を探し歩いています。

毎朝やってくるツグミの夫婦、カワラヒワ、シジュウカラ、ゴジュウカラ、ヤマガラ、アカゲラ、コゲラ、アオゲラ、エナガ、イカルにシメ、カケスと、我が家の庭もとても賑やかです。今は野鳥の中でも特に美しいキビタキがやってくるようになりました。

長い冬に耐えられるのは、こんな季節が巡ってくることが分かっているから。今、森は爆発するようなエネルギーを噴き上げています。そのエネルギーのシャワーを浴びていると、凍り付いた冬のことなどいっぺんに忘れてしまいます。この森に魅せられたのは、この春があるからです。
 

そろそろジャガイモの植え付けをはじめます。去年植えたニンニクは順調に育って、6月の末にはたぶん収穫できるでしょう。森のあちこちに咲くニリンソウ、ヒトリシズカ、サクラソウ。私の庭は今、チューリップとムスカリ、スミレが満開です。ルピナスも咲き始めました。

季節ごとに渡ってくる鳥たちもいます。これからはホトトギス、カッコウ、ミミズクにフクロウ。彼らはこの森で卵を産み、子育てをします。フクロウの巣立ちはすぐに分かります。枝から枝に母フクロウが飛び、ホーホーと鳴きます。雛は母親の声を追って、夜の森を飛びます。

それに相変わらず毎日、からすのクロウがやってきますが、最近、ヒヨドリがその後をつけ回すようになり、クロウは怒っています。この森で繰り広げられる生き物たちの日々、それに魅せられてしまった私は、とうてい他の土地で暮らすことなど考えられなくなっています。
 

2018/05/06 高瀬千図拝

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