2018/10/10
お知恵を拝借

秋空

台風24号は大変な風でした。その後はなんとも美しい秋空。しかし、 風台風 かぜたいふうが通り過ぎた後、このあたりは倒木が相次ぎ、停電が三日間続きました。

倒れたのは白樺、カラマツ、赤松などです。根が浅く、強風にあおられるといともたやすく根こそぎ倒れてしまいます。道路は封鎖、電線に倒れ込んだ木を伐採し、クレーンで運び、電線をつなぎ、と昼夜を分かたず復旧作業が続いていました。

とはいえ、ろうそくの灯りだけの暮らしはやはり不便極まりなく、灯りがともった時には思わず手をたたいてしまいました。明るいだけで幸せ、などと思ってしまいます。
 

我が家も例外とはいかず、母屋は免れましたが、ベランダに大きなハルニレの木が倒れ込んで大変なことになりました。いつも庭の手入れをしてくれる方がすぐに駆けつけてくださり、翌々日には片付けてくれました。

倒れたのは手入れをしていない隣の森の木でした。持ち主もその日の夕方には来てくれて、これからは好きなだけ間伐して、好きなだけ薪にしていいからと言って帰っていきました。

かつてこの辺りは木を切ってはならないというエコロジストが多く、木を伐採すると非難がましい視線を向けられたものでした。

ほんとうの森、手つかずの森は今やこの国にはほんの限られた地域にしか存在しません。一度、人の手が入った森はずっと手入れをしなくてはならないということを知らない人が多くいます。木が密生すると光も風も通らなくなり、荒れて陰気な森になってしまいます。

熊がいる森は、熊が適当に若枝を折って食べてくれるので、光の通る森になると言われています。熊を頼ることができない以上、それは人間の仕事になります。

我が家の森はカラマツを一掃し、かえでなら、桜などを植えています。ヤマボウシやモミジ、アジサイといった丈の低い木に植え替え、根がしっかりと張っている小楢こなら水楢みずならはそのまま残しておいた結果、今や大人の両腕でも抱えきれないほどの大木になりました。大人になった証拠はドングリです。たくさんのドングリが落ちています。
 

ところでようやく拙著『明恵-栂尾高山寺秘話』が弦書房から上梓の運びとなったのですが、お納めにいった京都・栂尾の高山寺は21号台風の風で大変な被害を受けていました。裏山の北山杉の巨木が重なり合うように倒れ、開山堂がことにひどい被害を受けたとのことでした。国宝だらけのお寺ですから、修復には億を超える費用が必要とのこと。

2メートルほど崩れた石垣ですら、ただの石垣ではなく、鎌倉時代、明恵上人が自然の景観を配慮して特別に石工に造らせたもの、修復には何千万もかかってしまうとのこと。高山寺は 塔頭 たっちゅうのことごとくが国宝、また世界文化遺産に登録されているものだけに修復といっても簡単にはいきません。

一人の力ではどうにもならなくても、みんなの力を合わせれば、と思うのですが、もともと明恵上人の思想を大切にしてきたお寺ですから、檀家がいるわけでもなく、寄進を募るについてもためらいを感じてしまうとのことでした。なにかよい知恵がありましたら、どなたかどうぞお聞かせください。

2018/10/10 高瀬千図拝

 

 

2018/10/10
お知恵を拝借
」への2件のフィードバック

  1. パリでの能公演に際してお手伝いした、当時交流基金に勤務していた井上です。ご記憶でしょうか。我が家もセカンドハウスが八ヶ岳にあり、たまたまネットサーフィンをしていたところ、高瀬さんのブログに出会いました。我が家も先日の台風で松の木が倒壊、物置が壊れるなど、これから修繕しなければなりません。ブログを拝見し、高瀬さんのことを懐かしく思い出しました。

    1. 井上様
      ご返事が大変遅くなりました。お許しください。
      パリ公演の節はいろいろお世話になりました。今も能の方達の語りぐさになっているほど、パリ公演は楽しい思い出になりました。
      様々にご配慮いただきましたこと、今もよく覚えています。
      ご家族もみなさまお元気でしょうか。

      八ヶ岳山麓に暮らすようになって随分になります。この森の中でなければ『明恵』執筆は不可能だったように思います。一人、考え続ける毎日でしたから、ここの静寂、人の煩いがないことが何よりでした。

      書評はあちこち出ていて、ウェブで見ることができます。
      週刊読書人は10月26日、東京新聞は11月11日の『本』というところで見ることができます。

      明日は北海道新聞がインタビューに来ます。
      それでも毎日の暮らしは何も変わらず、今はまた次の作品の準備にかかっています。

      幸せな日々です。
       

      【参考情報】
      ・週刊読書人 掲載書評
      ・東京新聞 掲載書評

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