アダムの呪い

著者:ブライアン・サイクス
出版社:ソニーマガジンズ
 

これは遺伝学者によって書かれた科学的な本で、けっしてオカルトではありません。

人はなぜ戦争をするのか、この世界にはなぜ殺人やレイプ、支配や略奪が横行するのか、なぜ女性は男性に差別され続けてきたのか、そんな疑問にすべて答えてくれる、これは遺伝学の本なのです。
 

『アダムの呪い』と題された理由はY染色体にあります。Y染色体を持つのは男性です。遺伝子にこれを持っていると受胎時はすべて女性であったものが、男性化を始めます。

男性化を起こさせるホルモンはテストステロン。これが男性を作り、男性の思考、行動を司るようになります。

『呪い』とはY染色体に仕組まれていた時限爆弾のことです。受胎のときは私たちは全部女。でもY染色体を持っているとテストステロンという男性ホルモンが出て、それが男性化させていきます。

しかし、Y染色体は別のY染色体の存在を許しません。『犯すか殺す』というのがテストステロンの機能です。世界を自分の染色体で満たす、それがY染色体に仕組まれた働きなのです。
 

アレキサンダー大王もジンギスハーンも、そして強大な国が弱小国家を次々に侵略していくのも、実はY染色体の働きだとサイクスは言います。

「Y染色体が人類の歴史を作ってきたとさえ言えます」と。

ふ~ん、歴史ってY染色体と関係していたのか・・・。

それで納得。胸のすく答えです。
 

同じ著者の本に、女性の遺伝子を扱った『イヴの七人の娘たち』があります。これも一時期話題騒然となった本です。もちろんここでイヴというのはミトコンドリア・イヴのことです。

本来、遺伝学上では女性にはこの七人の姉妹しかいないとされていましたが、いまや人類の歴史は書き換えられようとしています。なぜならスーパー・ミトコンドリアが生まれたからだとサイクスは言います。

それがこれから人類の生存の鍵を握っていると。

 

遺伝学者の言葉だけにこれには説得力があります。この世界に何が起きていたのか、これからどうなっていくのか、スリリングな展開に息をのみます。

この本は男性にも女性にもお勧めです。一度は読んでみてください。