私は人生の敗者でありたい

人の目に立たないものでありたい
木の陰に身を隠し
風音に驚いて草むらに飛び込む
そんな小さき虫でありたい

風が止み
揺れる草の 音すら消えて
静寂の森のどこか
飛び立つ鷹の 空を切る羽音を聞く

水面でホバリングするトンボの羽
そのきらめきが立てる音を聞いた人はいるかしら?

明け方ちかく
うつつの暗がり 浅くなった眠りの中で
霧雨の雫の音を聞く そしてまた眠りの中へ沈み
やがてまぶたに朝の青い光を受け 私は目覚め

窓の外は金色の霧
木々は朝露に濡れ
千の葉に黄金のしずく きらめき
雨の粒をやどした蜘蛛の巣が 森の吐息にゆらめく

こんな朝もあるのだと 心はいまにも歌い出しそう
声にもならない喜びが霧にじゃれかかる
陰遁者 敗者の日々であればこそ
このゴージャスな朝

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