2010/11
受難の3ヶ月

八ヶ岳の頂上は雪。すっかり寒くなってきました。今年の春、家のすぐ近くの池で十羽の鴨の雛が孵化したことはすでに書きました。今のところ、全員元気に育っています。このところ、みんな潜水の練習に余念がありません。見ていると、けっこう長い時間潜っています。魚を探す練習でしょうか。

それにまた朝の散歩で、雉の兄弟たちにも会いました。こちらは六羽、雌が三羽、雄が三羽。体つきはまだ大人になりきっていませんが、羽根は少しだけ産毛を残してもう立派に大人のものでした。とくに雄はその色合いが孔雀に似ていて目が覚めるようなとても美しい姿をしています。

雉は性格がとても呑気で、雛のうちは母鳥と一緒ですが、巣立ちをしてからはずっと兄弟一緒に過ごします。兄弟たちが互いの姿を確認し合いながら、かたときも離れずに行動している姿を見ていると本当に感動します。飛ぶことはまれで、ほとんど一日中、森の中をゆったりと歩きまわっています。

毎年のことですが、11月15日は狩猟解禁日。朝から猟銃を持った男の人たちがこの森に押しかけてきます。連日、鳥たちに散弾銃を浴びせます。見ていて、呆れるほど何発も撃つのです。ただ銃が撃ちたい、鳥や獣が撃ちたい、それだけのようです。

子供のころ、体が弱かったせいかどうか、感情が高ぶると体がつらくなるので、私はいつしか腹を立てない人間になっていました。怒りを感じる、そのためにセラピーが必要だったくらいです。

でも、ここに引っ越してきた最初の秋、狩猟解禁の日、私は銃の音を聞いて、猛然と腹を立てました。それまでずっと池の鴨の雛が育っていくのを毎日楽しみに眺めていたからです。あの子たちが殺される、そう思って、私はそのまま家を飛び出し、銃を持った人たちを追いかけていました。すぐ目の前を散弾銃の弾がビシッ、バシッと音を立てて飛んで行きました。

「なんて無茶をするの。ほんとに危ないでしょ」と近所の人にたしなめられました。「彼らには道徳も動物愛護の気持ちもないんだから」と。

一昨年のこと、注意したら、逆切れされました。銃を撃つ許可を得るために高いお金を国に払っているのだと言うのです。しかもあまり騒ぐとただではおかないと脅されました。私もしっかりとその人たちの車のナンバーを記憶しました。銃を持った男性が散歩途中の人間を威嚇するような言動をしたら、問題ではないかと思ったからです。

ただし、これを訴えたところで証拠があるわけでもありませんし、ここが禁猟区になるわけでもありません。そこで村に相談して、看板を立ててもらいました。近隣には人が住んでいること、散歩する人も多いから注意するように、と。それくらいしかできないことが実は情けなくてなりません。

鳥たちは私たちになんの危害もくわえないし、雉なんかただ森を散歩しているだけです。それでも人間は銃で殺そうとします。中にはそれをはく製にして喜んでいる人もいます。今年もまた11月15日がやってきます。2月15日までの3ヶ月間、鳥や動物たちの受難の季節がつづきます。悲しくて、つらい3ヶ月です。

2010/11/06 高瀬千図拝

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