夏真っ盛りの今もここ八ヶ岳では朝夕は長袖がほしくなる涼しさです。朝の気温16度、昼間との温度差が激しいので、体調管理がたいへんです。それにしても今年はズッキーニやジャガイモが順調に育っています。自分で育てて収穫することには格別の喜びがあります。
先日は大学時代の友人が大腸癌という診断を受け、手術しました。幸い手術は成功し、転移もなくて順調に回復していると、彼女を見舞った別の友人から報告がありました。ちょうどそのころ私は母のことで長崎と長野の往復がつづいていて、駆けつけることができませんでした。
7月半ばに再検査するというので、それが終わる頃を見計らって山陰の自宅を訪ねました。空港に迎えに来てくれた彼女は思った以上に元気そうでほっとしました。
18才のころ、故郷を離れて初めての一人暮らし。地方の公立女子大での生活は慣れないことがたくさんありました。それにまだまだ日本がとても貧しい時代で、電話など誰も持っていませんでした。親に連絡を取るには手紙を書くか、近くの雑貨屋さんに電話を借りに行かなくてはなりません。電話が繋がるまで二時間はかかりました。
そんな寂しさからクラスメート同士、お互いの下宿を訪ねては夜更けまでいろいろなことを語り合いました。今もそのときからの仲間が数人残っています。何があっても正直に打ち明け、相談し、夏休みには互いの家を訪ねました。訪ねるといってもそのころはまだ新幹線もなくて汽車で何時間もかかる旅でした。そうしたお陰でお互いになんの秘密もない気楽な付き合いが47年間続いています。
今になって思うのは、この仲間はどうやら似た者同士らしいということ。お互いに愚痴を言うのが嫌いで、つらいときほどなかなか弱音が吐けませんでした。なんでもない顔で耐え抜き、後になって笑い話になってから報告する、今もそんなふうです。
夫を亡くして一人で子供二人を育て上げた人、生涯独身で仕事に邁進しつづけ、最後に親を看取った人、離婚して以来ずっと一人で頑張ってきた私、人生はそれぞれです。
そして互いに今は65才、これからどれくらいの年月がお互いに残されているのかそんなことを思う年齢になりました。それだけに会っている時間がとてもいとおしくなります。
「こんなふうに、18才の時から今になっても会えているだけでどんなに幸せかと思うの」と友人は言いました。「だからね、一緒に過ごせる間はできるだけ会おうよ」と。
偶然、二人とも海に行きたいと思っていたことが分かって泳ぎに行きました。日本海の荒々しい波と遊び、彼女のお気に入りのレストランでゆっくり食事をし、三日間、また学生時代に戻ったようにたくさんおしゃべりをしました。
こんな時間が持てることの幸福に感謝しつつ、移ろっていく時もまたそのまま受け入れていきたいと思いました。
9月には今度は彼女たちがここを訪ねてくる約束になっています。
2011/08/05 高瀬千図拝