Merry Christmas ☆☆☆
少々気が早いと思われるかもしれませんが、この八ヶ岳便りは開運情報でお届けしているお手紙を転載しております。今月は12月のお水取り情報をお届けしておりますのでクリスマスを意識してみました。
アロリカの新しいレターヘッドができました。(右側の画像)これはそのお披露目です。友人がデザインしてくれました。ことにこの四枚の花びらを持つ金色のマークがとても気にいっています。
ここ八ヶ岳も今年はいつもより暖かいのですが、これから日一日と寒さが近づいてきて、やがて小川のせせらぎが少しずつ凍りはじめます。森の木々も草もひっそりと眠りにつき、大気は静まり、静謐な時が訪れます。私が一年でもっとも好きな季節の始まりです。
9月からネオ心理学のクラスが始まりました。第四期生です。若い方が多いのですが、共通しているのはその生真面目さです。まっすぐに自分の人生、自分自身と取り組もうとしているその真摯な姿勢と真面目さには頭が下がります。
しかし、気になるのは、この国に蔓延している生真面目さを小馬鹿にする風潮です。要領よく、時代の波に乗って軽く生きることがあたかも洗練された生き方のように勘違いしている人が少なくない気がします。
私は若かった頃、よく周囲の人たち、特に男性たちにからかわれました。「ほんとに真面目なんですね」と。中には露骨にバカにする人までありました。それが『真面目=融通の利かないバカ』という意味なのか、時代に乗り遅れた愚鈍な奴という意味だったのか、今も私にはよく分かりません。
「あなたはなぜ書くのですか?」
と聞かれて、私が「人はどうすれば幸福に生きられるのか知りたいからです」と答えたら爆笑されました。その後、その方が横を向いて「ほんとばっかじゃないの」とつぶやく声が聞こえました。時代の最先端、広告業界にいる方でした。
確かにバカなのかもしれません。
それでも私自身は少しもかまわないし、このまま生真面目に人はどうすれば幸福に生きられるのか、考え続けていくつもりでいます。
もともとこの国の人はとても真面目です。この国の伝統文化、文化遺産にはその気質が関係しています。飛鳥、奈良、平安から江戸にいたるまで世界に誇るべき工芸品や建築はすべて名もなき職人たちによって営々と受け継がれてきた技術によるものです。この国の文化は明らかに職人たちの生真面目さ、裏表のない正直さによって支えられてきました。
かつてポール・クローデル(1921-1927、外交官として日本に滞在)は、そのエッセー集『朝日の中の黒い鳥』の中でこんなことを語っています。
「私はこれまでたくさんの国を訪れたが、この国の人々ほど優雅な人たちを他に知らない。馬車と行き交うとき車引きまでが道を除けて静かに会釈を返す」
と。今は昔の話です。
早い者勝ちといわんばかりのあざとさ、無責任で品格を欠く露骨な表現、人の幸福を喜ばない嫉妬深さ、そんなマスコミの今日のありようをみるとき、またそれを支えているのが私たち自身であるとすれば、私たちはきっとどこかで道を間違えてしまったのではないかと思います。
生真面目で真摯、不器用だが正直、それでなくてはこの国の将来はないと思っています。だからこそ敢えて若い方々にお願いします。
苦しくともどうぞ生真面目にご自分と向き合って生きていってください。人生の大いなる果実は真摯に生きた人にしかもたらされないものであり、それはまた無形有形にかぎらず私たちが思うより遙かに素晴らしく豊かなものです。
間もなく私も66才。だからこそ言えることでもあります。
2011/11/06 高瀬千図拝
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