2013/12
このゆびとーまれ

先日、久しぶりに富山中央植物園に出かけました。造られてから20年。広さは約74000坪、神通川のほとりにあります。

かつてカドミウム汚染でイタイイタイ病が発生し、多くの方々が苦しみました。その汚染されてしまった地域には住宅が建てられないこともあり、汚染土壌の除去が終わった後は広大な公園に生まれ変わったり、ショッピング・モールになったりしています。

 

中央植物園もそのひとつ。
今は広々とした庭園に何百何千という種類の木々や草花が育っています。池にはたくさんの鴨がゆったりと泳ぎ、今は雪に備えて雪囲いの準備が着々と進んでいます。温室には宇宙花を思わせるバオバブの花、ヒスイカズラなど貴重な熱帯の花もまた見ることができます。

ここには四つの部会があります。キノコ部会、植物誌部会、ボランティア、植物画部会などです。

植物細密画のクラスはかなり難しいらしく、挫折する人が多いと聞きましたが、そこは恐いもの知らず、やってみなくては分からないと、私はそのクラスに入りました。

というのも、富山に来て、誰も知り合いがいないという状況では一人でいることが多く、週末に娘と一緒に過ごす以外、誰とも話をしていないことが数か月も続いていたからです。

これは気をつけなくてはなりません。年齢的なものもありますが、引越しのストレスは存外大きいものですし、ましてや初めての土地で誰とも話をしない状態が長引くと鬱になる確率がかなり高くなります。そんなこともあり、植物細密画のクラスに入り、またその技法を学ぶカルチャースクールにも入りました。

 

それからもうひとつ。
富山型デイケアで有名になった「このゆびとーまれ」という施設にボランティアとして通い始めました。ここは寝たきりの老人、知的障害、身体障害のある子ども、託児所に入れないゼロ歳児、誰でも無条件に受け入れてくれる施設です。

惣万そうまんさんという日赤病院の看護師さんが始められました。惣万さんは講演の依頼が全国から寄せられ、飛び回っていらっしゃいます。特別に何かしてくれるというのではなく、誰にとっても我が家にいるような感覚で過ごせる場所がこの「このゆびとーまれ」なのです。

車いすのお年寄りと一緒に障害を持つ子供たちがにぎやかに遊んでいて、スタッフは必要なケアはきちんとやりますが、それ以外は普通にただ暖かく見守っている、つまりごく普通の家庭の風景がここにはあるのです。ありそうで、これまでなかった施設です。

私はかつて知的・身体的障害を抱えている子供たちの施設で十数年ボランティアをしていました。そこで子供たちの相手をしながら、実は癒されていたのは私自身でした。

彼らはあるがままの人たち。言葉も表情もそのまま、心のままです。嘘も駆け引きもない子供たちと過ごしていることで、私はほんとうに幸福を感じていました。彼らと一緒に遊び、大笑いし、ふざけあい、おしゃべりし・・・。

ここでも同じでした。
障害が重い軽いはあるのですが、歌っていても積み木で遊んでいても一緒にいてとにかく楽しいのです。すぐに友だちになり、日が暮れるころ、帰らなくてはならないのが惜しいくらいでした。次はお弁当持参で行くことにしています。

代表の惣万さんにも副代表にもお会いしました。静かでやさしくて暖かで、豊かな感受性を持った方々。ああ、こんなにやさしい人たちがこの世にはいてくださったんだ、と知ることができただけでも私はとても幸せでした。

2013/12/06 高瀬千図拝

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