2014/04
頭のいい子の育て方

ここ富山も先週を境に季節は冬から春へくっきりと変りました。今、松川のほとり、中央植物園、いたるところ桜が満開です。

 

先日、ある若いお母さんに尋ねられました。

「どうしたら頭のいい、性格のいい人間が育つのでしょう」と。

自分の子どもが「頭が良くて性格が良くて立派な人間に育つ」というのは、親にとっては大事な夢のひとつに違いありません。

 

「ありますよ」と答えるとそのお母さんは目を丸くしました。
「ええっ、でも、そんな魔法のような方法がほんとにあるのでしょうか」と。

 

実はそれは魔法ではなく、とても現実的なことなのです。

「頭がいい」というのは「考え抜く力」を持っているということです。記憶力が優れている、というのも頭がいいことのひとつかもしれませんが、人生は知識ではどうにもなりません。

それまで培ってきた知識を応用する力、知恵が必要だからです。

巷にはハウツウ本、つまりいかに簡単に目的が達成できるか、専門家らしき人や現実的に成功した人の本などがあふれています。しかし、人生の目的が単なる成功とかお金持ちになることであるなら、なんとつまらないのだろうと思います。

 

大事なのは「与えられた命をいかに良く生きるか」ということ。それこそが生きることの深遠なテーマであり、また進化する宇宙の一部として人間がたどる成長のプロセスにこそ意味があるからです。

 

近代文明はより便利な方へ、より簡単な方へと私たちの暮らしを変化させました。しかし、現実には精神を疲弊させ、ストレスにまみれて自分の存在意義すら見いだせず、喜びのない生活を送る人が増大しています。学校ではいじめが蔓延し、自殺する子どもさえいるのが現実です。

 

では「頭のいい子の育て方」というのはどうなのか。
実はとても簡単で「考える力を養う育て方」ということになります。

 

他者への配慮、思いやり、人間や世界に対する豊かな感受性と洞察力、想像力と創造力は「考える力」が支えています。

 

その「考える力」は木に例えれば「根」にあたります。根が小さく痩せている木は育ちません。根がしっかりと太く深く大地に根差していればそれは巨木に育ちます。

その「考える力=根」を育てるのが実は文学なのです。文学など「現実には役に立たない」と思われていますが、実は文学は人の思考力を培う、根を育てる大事な役目を負っています。

活字を読むことの喜びを知った子供は自分でそれを求めていくようになります。読むことによって想像したり考えたり、また自分では体験できないたくさんの人生や人間について知ることが可能になります。

漫画やアニメでは想像力は育ちません。ゲームでは脳が退化するという実験データもすでに出ています。

 

そこで私はそのお母さんに言いました。

「毎晩、物語を読み聞かせてあげてください。自分で読めるようになったら、さらに楽しくなり自然にいろいろな本を読むようになります。長い目で見てあげてください。思考する力を持った子は自分の人生を創造する力も持つことになりますから」と。

 

そう言いながら私は自分の父親に感謝しました。小さいときからほんとうにたくさんの本を与えてくれたからです。

頭がいいか悪いかはさておくとして、私はそれによってたくさんの豊かな世界と出会い、70才になろうとする今もまだ好奇心に満ち、思考し、日々新たな発見を続けられているからです。

人生を豊かにする読書、幾つになろうと遅きに失することはないと思います。

2014/04/06 高瀬千図拝

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