2015/01
富山に住む幸せ

ネコヤナギ 植物細密画

新年明けましておめでとうございます

元日は大雪、かなり積もりました。昼間も辺りが真っ白になるほど降り続き、ようやく北陸の冬を体験しました。

これまでは暖冬のせいかほとんど雪がなく、これは富山ではない、といろいろな人に言われたのですが、この大雪のお蔭で私もようやく富山人になれた気もします。

富山はほんとうに大らかなところで、富山県人を名乗る条件というのがいくつかあります。

まず、富山で生まれたこと、次に富山の学校のどれかに通ったことがあること、富山の会社で働いているか働いたことがあること、富山に住んだことがあるか住んでいること。

これらのひとつがあれば、富山県人として認めると富山市発行のガイドブックに書かれていました。

そのせいか、ここでは自分がよそ者だと感じさせられることはまったくありません。ましてや顔見知りになるとすでに友達のよう。これほど人懐っこく、親切な人たちも珍しいと思います。

しばしばお家にも招かれ、ひとしきり他愛のないおしゃべりをしたり、漬物がうまくつかったからと持ってきてくれたり、スーパーでもレジの女性とお喋りしたり。まるで故郷にいるような気持ちになります。
 

上の絵は私が描いたネコヤナギです。下手なものですが、植物細密画のクラスに通い始めて一年、植物画というものがどんなものなのか、ようやく分かりかけたころの作品です。

最初のころは水彩画とどこがどう違うのかも分からず呆然としていました。

それが仲間に教えられ、先生に指導を受けているうちに、描いたなどとは到底言えないのですが、『らしいもの』なら描けるようになりました。
 

毎日、実は新しい小説を書いていて、調べ物をしながら、ストーリーを書きながら、また資料に戻って調べ、という繰り返しで左脳はくたくたに疲れ、夕方には伸びきったゴム状態になります。

そんなとき、ほんの少しの時間ですが、植物画を描きます。これは観察と描写だけ。右脳の世界です。
 

それが左脳の疲労を取ってくれることに気づき、植物画を始めてよかったとしみじみ思います。

それでも花一輪描くのは至難の業です。花びらと葉の繊細な色あい、花びらの細やかなひだや葉脈、光の当たり具合などを正確に描きだすのはあまりに困難で、途中で筆を投げ出したくなります。

目に手が追い付かないだけでなく、花の持つ色はあまりに多様で、それを透明水彩絵の具で再現するには長年の修練が必要なのです。

そして、たくさんの作品を通じて経験を積み、色の配合の仕方を覚え、いくらか描けるようになるまで数年間、いえ十年間、花一輪と格闘することになります。

それでも楽しくて夢中にさせられるのが植物画です。

それに毎回、クラスが終わると仲間数人とランチに行きます。話題は植物のこと、その育て方、はたまた料理の仕方などなど。たまにその足で展覧会に出かけたりします。

先日は 円山応挙まるやま おうきょ 展でした。その技法と表現の仕方に驚嘆し、感動し、みんないささか興奮の体で会場を後にしました。人生、感動を分かち合える喜びに勝るものはありません。応挙の描いたスズメ一羽にかくも興奮できる仲間がいることも富山に住む幸せのひとつです。

2015/01/05 高瀬千図拝

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