2015/11
新幹線開業後の富山

秋の富山県中央植物園

写真は秋の中央植物園です。11月になると訪問者もすっかり少なくなって、間もなく渡り鳥が池の面を埋め尽くします。

身近に自然がたくさん、海も近いし、などと友だちにも自慢していたら、新幹線の開業でなんだか様子が違ってきました。2時間で行ける東京。私も度々利用しているのですが、北陸がとつぜん脚光を浴びたせいでしょうか。いつもならスーパーにずらりと並ぶ季節の魚が少なくなりました。
 

富山を訪れる友人たちが楽しみにしていたお寿司のネタも変わりました。いつも心待ちにしていたカマスがない!お寿司屋さんに尋ねたら値が上がってしまって、とのことでした。しかも近所のスーパーには毎年立派な25㎝はあるカマスが並んでいたのに、今では小さい物ばかり。

ゲンゲ(幻魚という字をあててありますが、実は下の下=ゲノゲ がもともとの名とか)は深海魚。ゼラチン質の奇妙な姿が気味悪がられ、漁師の方たちしか食べない魚でした。ところがこれがとんでもなく美味。味はとても上品でコラーゲンの塊、というのが知られるようになって、ゲンゲまでスーパーにちょっとしか出なくなってしまいました。

氷見の鰤はもともとブランドではありますが、富山湾に回遊してくる魚。いつでも食卓に並ぶのが常でしたが、今では高級すぎて(つまり値段が高すぎて)手に入れるにしても贅沢すぎて勇気がいります。
 

食べる話ばかりで恐縮ですが、お米ももともと立山から流れ出る豊富な水のお陰でとてもおいしいのです。今は富山内で消費されるくらいでなんとか間に合っていますが、そのうちこれも手に入りにくくなるかもしれません。甘くまろやかな味です。

かつては暗くなると人通りの絶えていた駅の周辺もずいぶんと賑わうようになりました。自然災害が極端に少ないことが理由でしょうか、関東から会社ごと富山に移転するところも次々に出て来て、アウトレットも次々に開店。経済が活性化するのはいいことなのですが、小さな商店はシャッターを下ろしたまま。いずれ巨大なビルが建ち並ぶ富山、となるとなんだか寂しい気がします。

もともと加賀の米倉と呼ばれた土地なので、みんな自分の土地でお米も野菜も育てる気風が残っています。自分の家の庭先で、なんとも上手に野菜を育てている光景は他の土地では見たことがありません。若い人たちもがんばっていて、イタリアンなど東京の一流店にも負けませんし、小さいけれど面白い個性のあるお店もいろいろあります。

こればかりは旅行者が見つけ出すのは無理。富山に住んで初めて知ることができることです。富山に仮住まいを初めて二年半。やっぱり富山が大好き、と思いました。それで、今月半ば、ずっと住み続けられそうなマンションに引っ越します。東に面したベランダから毎日眺められる立山連峰からの日の出が楽しみです。それにマンションには妙な西洋風の名前がついていないことも気に入りました。

2015/11/06 高瀬千図拝

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