この花はスノードロップ。
まだ土が凍っている時期に咲き始め、みるみるうちに庭に広がっていきます。とても可憐な姿をしています。
我が家の庭ではこれから次々に花木が花を咲かせていきます。どの花も開花の時期が微妙にずれているので、常にどれかが咲いている状態になります。
この17年、試行錯誤の末にようやく真冬の寒さに耐えられるものが残った結果です。
最初に咲き出すのはこの小さなスノードロップ、それから水仙。ムスカリも紫色の花を開き始めました。次は淡いピンクのマグノリア。これはかなりの大木になりました。
すみれ、忘れな草が土を覆い隠すころになるとチューリップやバラが彩りを添えるようになります。桜が散ったあとは小梨の花が満開になり、やがてヤマボウシが咲き、雨の日も気持ちを晴れやかにしてくれます。そして夏中、アナベルの白い花が庭を飾ります。
『黎明』の著者・葦原瑞穂さんが交通事故で亡くなって半年余りが過ぎました。
それまで彼は家も家族も、功名心も名声も肩書もすべてを捨てて清里の市営住宅で暮らしながら『黎明』の執筆を続けていました。
今でこそたくさんの方々が彼を慕って集まってきますが、『黎明』が書かれた時、それを出す出版社はありませんでした。友人たちの喜捨で世に送り出された本でもありました。
彼は実際に天の意志に任せて生きることを実践した人でもありました。
『黎明』を紹介してくれた今も大切な若い友人がいます。彼女の勧めで『黎明』を読み始めました。読み始めてすぐに私は自動的に至福状態に入りました。心も身体も光に包まれるような心地がしたのです。
世界は個人の意識の集合体です。
その個人の意識が普遍意識に目覚めなければ、この世界はほんとうの幸福も平安も得られないと彼は語っていました。私はそのことをまだ未発表の『明恵』という小説で「仏性の目覚め」と言う言葉で表しています。
奇しくも同じことを目指している人がいた、ということが孤独な作業を続けている私をほんとうに励ましてくれました。
こんな季節になると、思い出すのはワインパーティのこと。
友達を呼んでしばしば我が家でワインパーティを開きました。料理は私、ワインは葦原瑞穂さん。
話題はいつも人の心と精神の進化について、世界で何が起きているのか、私たちはどこへ行こうとしているのか、朝まで語り合っていました。意志を同じくする者同士、こんな方がいてくださるというだけで私の心は安らいでいました。
その彼のことを今頃になってようやく「もう、いないんだ」と私の心は納得し始めています。亡くなった直後は感情が麻痺してしまったかのように、ただ呆然としていました。
頭では彼のような人にとってお金と物質に支配されたこの世界にいるのはほんとうに苦しかったに違いないし、天界の方々がそれを見るに見かねて迎えにいらしたのだと理解しているつもりでした。それがこのごろになって、ふと思い出したとたん、その不在に呆然としてしまうのです。
そして、ようやく涙が出るようになりました。この寂しさは言葉にしようもありません。魂の一部を失ったような、もう絶対真理について語り合う師はいないという現実。
「千図さんの好きなシャンベルタンが手に入ったよ。ワインパーティしようよ」
それが彼の最後のことばになりました。
2017/5/6 高瀬千図拝
昔からスピリチュアルには興味があって、様々な本を読んで来たのですが、「黎明」は衝撃でした。自分の中で、確実にトップ3に入る本です